昨日、高校時代にお世話になった先生が亡くなったことを知りました。
長い闘病の末、今年の夏頃に旅立たれたそうです。
あまりに突然のことで、ご病気のことも全く存じ上げなかったので、悲しくてしかたありません。
ただもうなんと言っていいか、
内田百閒に、親しい人が亡くなったことを遅れて知り、そのご自宅を訪れた時のことを書いた文章があって、そこに「道徳的行為を自分の利己心の元に行った」というような感慨が書かれていた。人のためと思っている行為が、実は自分のためにやっているのだということに気づかされ、そのことが残された御遺族の癒されかけた気持ちをまた揺さぶってしまった、という、本当に悲しい文章で、それを、先生の訃報を知るほんの数時間前に読んでいて、1分前まで笑ってたのに今泣いている自分はなんだろうとか、
————————————————————————–
↑ここまで2008.10.4記。
そのあと飲んで泣いて寝た。
————————————————————————–
高校時代の恩師が亡くなり、本日友人と弔問に伺いました。
ご多忙の中、先生の奥様が色々なお話を聴かせて下さいました。
2006年末〜2007初め頃に体調不良で受診したところ胃にガンが見つかったそうです。そのため胃の全てとその周りの膵臓やリンパの一部などを摘出する手術を受けられました。手術後は徐々に食事もとれるようになり、半年後には普通の量の食事をとれるまでに回復されていたそうで、奥様もその食欲には飽きれたほどだそうです(何とも先生らしい・・・)。それからはご自宅にて、日展、県展、官展などへ出品する絵の制作に励まれ、買い物や食事にもよく出かけていらしたそうです。
***
ちなみに、その頃に描かれた作品はどれも評価が高かったそうで、作家として“脂がのっていた”時期だったのかなと思います。
私の知っている10〜15年ほど前の、俯瞰した構図、緻密でしっとりとした印象(上の画像のような)とは違って、ナイフでざっくりと乗せたようなタッチや、近景で白い画面の中に人物が浮き立つような構図など、作風が大きく変わっていました。大きな病気をされたことでの先生の心理的な変化とも関係があるのかな、と少し思ったりしました。
それにしても、その年齢になってもまだ変化・進化し続けられるって、まったくすばらしいことです。
***
そして2007年末に肝臓への転移が分かりましたが、既に手の施しようのない状態であると、先生と奥様そろって告知を受けられました。
体力・筋力低下の問題や、肝機能の低下により起こる記憶障害が時折あったということですが、「痛み」という意味では症状がほとんどなく、その後もご自宅で療養しながら絵の制作を続けられました。
今年、2008年7月10日(先生の誕生日でもあります)まではご自分でアトリエの階段を上がれるくらいお元気だったそうですが、それから体調が徐々に悪化し、食事をとることが難しくなったたため7月24日に入院、その5日後の7月29日に静かに息を引き取られたそうです。66歳でした。
ご自宅の隣りにカフェ・ギャラリーを開いていらっしゃいますが、療養中も色々な方が訪れていたそうで、それが大分励みになっていたんじゃないか、と奥様がおっしゃっていたのが印象に残りました。
近く、そのギャラリーにて回顧展を開く予定とのことですので、詳細が分かりましたらまたお知らせいたします。
ギャラリー&カフェ 彩喜
http://www.g-saiki.jp
また、末筆ながら
奥様には、お忙しい中、不躾にもご自宅にまで伺い、何時間もお話を聴かせていただき(おいしいものもたらふくいただき・・・)、心より感謝いたします。
ご家族皆さまのご健勝をお祈り申し上げます。
————————————————————————–
↑ここまで2008.11.16記。
ようやくmixiとかでも報告。
————————————————————————–
弔問からの帰り道、先生の顔や高校時代の記憶が思い出され、病気を受け入れながらの暮らしや絵を描く姿が想像されて、それを何時間かの間に一息に再体験・追体験したような気持ちがして、なんだかとても疲れていた。
先生は風貌そのままにどこまでも優しかった。でもその実かなりロックな男だったんではないかと思っている。そうでなければ死ぬまで描き続け進化し続けるなんてことはできやしないと思うのだ。字義通り死ぬまで。そういうのをまざまざと見せつけられて、恐れ入りました!やっぱり先生だ!と、でっかい存在であることを今更ながら思い知る。うちのめされる。
先生が何気なくいった一言が、私に、絵を描くことやデザインをすることを続けさせてくれている。その言葉のおかげで今までなんとかやってこれてる。ちゃんとお礼が言いたかったよ。
先生に唯一くらったお説教(と勝手に思っている。勿論そんな口調ではなかったけど)、「負け犬みたいにきゃんきゃん言ってちゃダメなんだよー」。そうだなあ、きゃんきゃんばっかり言ってるなあ、と反省。もう言いません。(・・・なるべく。)
————————————————————————–
↑ここまで本日記。
奥様より喪中挨拶のはがき届く。お返事を書かねば。